ふきのとう(蕗の薹)は「春の使者」と呼ばれる早春を代表する山菜ですが、わらびやぜんまいのような面倒な下処理は必要なのでしょうか?ふきのとうの下処理の方法やあく抜きの方法、天ぷらにするときの下ごしらえの方法などをご紹介します。
ふきのとうの特徴
ふきのとうはキク科のフキ属の多年草で日本が原産の山菜です。北海道、本州、四国、九州、沖縄と日本各地に自生しています。春になると、土手や空き地で大きな丸い葉っぱを広げているふきを見かけたことはありませんか?もしかしたらいちばん身近な山菜かもしれません。
ふきのとうはその花茎(かけい)と呼ばれる小さなつぼみがあつまった花芽のことを指します。ふきの花芽の独特のにおいとほろ苦さを春の味覚として味わいますが、花がひらくにしたがってに苦味が強くなります。ふきのとうとして楽しめるのは、つぼみのときのほんの短い間です。
ふきのとうに含まれる栄養
ふきのとう比較的多く含まれる栄養素はカリウム、ビタミンE、食物繊維です。ふきのとうなどの山菜は、栄養素は野菜と同じように含まれているのに比較的低カロリーなのがうれしいですね。ふきのとうのカロリーは約100g(8~10個)で43kcalです。
ふきのとうに含まれるカリウム
ふきのとうに豊富に含まれるカリウムは、体に必要なミネラルの一つであり、細胞の浸透圧を調節する作用があります。摂りすぎた塩分を体の外に排出してくれる働きがあるため、血圧を下げてくれる効果があり、高血圧の予防などに効果があります。
ふきのとうに含まれるビタミンE
ふきのとうに含まれるビタミンEは「若返りのビタミン」とも呼ばれ、強い抗酸化作用によって体の中の脂質が酸化するのを防ぐ作用があります。血管を健康な状態に保ち、血中のLDLコレステロールの酸化を抑える働きがあるので、動脈硬化や生活習慣病の予防になります。また細胞の酸化を防いで老化防止にも役立つアンチエイジングの効果があるビタミンです。
ふきのとうに含まれる食物繊維
ふきのとうに含まれる食物繊維は不溶性食物繊維といって、便の量を増やして腸の動きを刺激する働きがあります。腸の中の有害物質を吸着して便と一緒に排出するので、大腸がんの予防に効果があります。
ふきのとうに含まれる有毒成分
わらびに有毒成分プタキロサイトが含まれているように、山菜やきのこには有毒成分のあるものが数多くあります。ふきのとうには有毒な成分も含まれています。
ふきのとうに含まれるペタシテニン
ふきのとうに含まれるペタシテニン(フキノトキシン)は天然毒素ピロリジジンアルカロイドの一種で、肝臓への強い悪影響があります。とくにふきのとうの根の部分に多く含まれていますが、ふきのとうを食べるときは、必ずあく抜きをする必要があります。また一度に大量に食べないようにしましょう。
ふきのとうによるアレルギー反応
ふきのとうを食べて強いアレルギー反応を起こす人もいます。原因はふきのとうの雄花な花粉といわれています。
アレルギー反応はふきのとうに火を通していれば出ないとはかぎりません。天ぷらなど加熱したふきのとうの場合、アレルギー反応が出るまでに時間がかかることもあります。
ふきのとうと間違えやすい植物
ふきのとうと間違えやすい毒性のある植物があります。山菜採りに慣れていない人はよく確認してから食べるようにしましょう。
ハシリドコロ
ナス科のハシリドコロ属の多年草ハシリドコロは、春先に地面から顔をだす葉に包まれた新芽がふきのとうに間違えられることがあります。
ハシリドコロにはアルカロイド類の毒が植物全体に含まれていて、誤って食べると嘔吐や下痢、けいれん、めまい、幻覚などの中毒症状が出る場合があり、最悪の場合は死にいたることもあります。
フクジュソウ
キンポウゲ科のフクジュソウは縁起物の植物として知られていますが、植物全体に強い毒性があります。地面から顔だしたばかりの新芽がふきのとうと間違われることがあり、誤って食べると嘔吐、呼吸困難、心臓麻痺などの症状が出る場合があり、死にいたることもあります。
ふきのとうの下処理方法
ふきのとうに含まれるペタシテニン(フキノトキシン)は水に溶けやすい性質があるので、しっかりあく抜きをすれば安全に食べることができます。ここでは一般的な重曹または塩を使ったあく抜きの方法をご紹介します。
ふきのとうの外側の皮をむいて、穂先と根もとの黒ずんでいる部分を包丁で切り落とします。黒くなっている葉はすべて取りのぞきます。
ボールにたっぷりの水をはって10分ほどふきのとうをつけます。それから流水で一つ一つ手で丁寧に洗います。
水1リットルに対して小さじ1ぱいの重曹(塩)が目安です。
ふきのとうを鍋に入れて3~5分茹でます。ふきのとうが浮き上がってこないように落し蓋が必要です。落し蓋がないときはキッチンペーパーでもOKです。
ふきのとうをザルにあげて冷水にさらし色止めをします。色が変わったら水を取りかえて、半日~1日ほどふきのとうを水にさらします。
ふきのとうの保存期間
ふきのとうは花が開くにしたがって苦味が強くなるので、採ったらすぐに下処理をしてあく抜きをしましょう。
生のふきのとうの保存方法
生のふきのとうをを常温で保存するなら2~3日で食べましょう。冷蔵庫に入れるときは新聞紙などにくるんで、ビニール袋に入れて5日ほどで食べ切りましょう。
ふきのとうの冷凍保存
大量のふきのとうが手に入ったときは、一度に全部食べずに冷凍することをおすすめします。ふきのとうの毒性成分はあく抜きによってほとんどなくなりますが完全ではありません。たくさんの量を一度に食べるのは避けた方がいいでしょう。
あく抜きをしてしっかり水分をとったふきのとうを、ジップロックなどの密閉袋に重ならないように入れて冷凍します。冷凍庫で1か月ほど保存できます。食べるときは自然解凍で。
ふきのとうの天ぷら
では「春の使者」ふきのとうを美味しく味わうにはどんな食べ方があるのでしょうか?ふきのとうの独特のにおいとほろ苦さを味わうならおすすめは天ぷら。あくの強い山菜を天ぷらにするときは、あく抜きをしなくてもいいといわれますが、ふきのとうも同じです。
ふきのとうの天ぷらの下ごしらえ
ふきのとうは葉が閉じたままでも天ぷらにできますが、ひと手間を加えるとさらに美味しい天ぷらができます。
ふきのとうは下処理をして洗って水分をしっかりきっておきます。ふきのとうの葉を中のつぼみが見えるくらいしっかり下まで広げます。
ふきのとうが平らになるように包丁で上から軽く押しつぶします。こうすると火が通りやすく短時間で中までカラッと揚がります。
ふきのとうの食べ方
天ぷら以外にもふきのとうの美味しい食べ方はあります。日持ちするものもあるので、ふきのとうの独特のにおいとほろ苦さを長く楽しみたい人は試してみてくださいね。
ふきのとう味噌
蕗の薹味噌の焼き🍙😊 pic.twitter.com/j3yLlhocNj
— ぺ~ (@peee0218) May 19, 2020
ふきのとうのほろ苦さと甘辛い味噌が合うふきのとう味噌。道の駅などで瓶詰にされているのを見かけたことはありませんか?殺菌消毒した瓶に入れて冷蔵庫で保存すれば半年以上保存できます。
ふきのとうのオリーブオイル漬け
ふきのとうのオイル漬け仕込んだ。
— 志村優衣|note (@yui_shim2) March 29, 2020
レシピはこちら👉https://t.co/nlTLYUH7qM pic.twitter.com/mSJ2rbGvVv
実は天ぷらと同じくらいおすすめしたいふきのとうの食べ方です。そのまま食べてもパスタや炒め物に入れても美味しい、使い勝手のいいふきのとうの作り置き。にんにくや炒めたアンチョビを加えてもOKです。冷蔵庫で1週間ほど保存できます。
まとめ
独特のにおいとほろ苦さがくせになる美味しさのふきのとうですが、肝毒性の強い天然毒素ピロリジジンアルカロイドの一種、ペタシテニン(フキノトキシン)を含んでいます。ですが、ペタシテニン(フキノトキシン)水に溶けやすい性質があるので、しっかりあく抜きをすれば安全に食べられます。天ぷらにして食べるときはあく抜きが必要ないので、採りたてのふきのとうを味わうには、天ぷらがいちばんおすすめです。
また山菜採りに行って自分で採ったふきのとうは、よく確認してから食べるようにしましょう。ふきのとうに似ている植物に有毒成分のあるハシリドコロやフクジュソウの新芽があり、誤って食べると重篤な中毒症状がでる場合があります。
以上のことを気をつけて、春ならではの味覚、ふきのとうを楽しんでくださいね。